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- 耳ず

- 2024年12月6日
- 読了時間: 6分
更新日:2024年12月7日
先日病院に行ってきました。
肺炎が治って、クリーンな肺のレントゲン写真を見ました!
嬉しい……………涙
肺炎本当に怖いですね…。
宮沢賢治の詩を最近読んでいたのですが、「永訣の朝」という病に伏せた妹に向けた詩があるんです。
けふのうちに
とほくへいってしまふ わたくしのいもうとよ
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゆとてちてけんじや)
うすあかくいつそう陰惨(いんざん)な雲から
みぞれはびちよびちよふつてくる
(あめゆじゆとてちてけんじや)
青い蓴菜(じゆんさい)のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀(たうわん)に
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがつたてつぽうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゆとてちてけんじや)
蒼鉛(さうえん)いろの暗い雲から
みぞれはびちよびちよ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
…ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまつてゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまつしろな二相系(にさうけい)をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらつていかう
わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
みなれたちやわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あぁあのとざされた病室の
くらいびやうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
(うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ
宮沢賢治の詩の世界
より引用
出典「心象スケッチ 春と修羅」1924年4月20日初版
妹は肺炎のために24歳で亡くなったんです。
本当に怖くなりました。
肺炎になったので、解像度が上がって、妹の苦しみや看病する賢治の苦しみを思うと、途方もない気がしました。
この苦しみというのは、単なる辛さではなく、やるせなさみたいな無念も含みます。
肺炎だと分かって、病院で適切な薬をもらうまで、39度の熱が普通でした。最高で40度まで出ます。
カチカチに凍った保冷剤をおでこに2つと首に3つあてて冷やしていました。
(熱が下がって同じことをしたら、冷たいのが痛くてすぐやめました)
この詩の時代は当然保冷剤はないでしょう。
冷やしてやるのにどれだけの苦労があるでしょうか…。
氷どころか水でさえも今より貴重(蛇口を撚ればすぐではない。じゃぶじゃぶ使えないだろうという意味で)だと思いますし、そりゃ外に雪があればそれを使おうとなりますよね…。でも雪もすぐ溶けてしまいますから、すぐ取り替えないといけないわけで…取りに行く方も手がかじかむでしょう…。
(追記)この詩の場合は、雪は…みぞれは食べるために取ってくるみたいです。それを知って尚悲しくなりました…。
この詩を持ってきた割に、理解度が低いので解説を読んだのです。
私は適切な薬をもらうまで自力では全く熱が下がる気がしませんでした。
解熱剤で熱が下がって、楽になって、どんなにこのままでいたいと思っても薬が切れたらどんどん上がっていきます。
私の場合、解熱剤が効くのに1時間〜2時間かかるのに、解熱効果が持続するのも2時間程度であまりにも短く感じました。
この時代解熱剤はあるのでしょうか?
肺炎の薬自体は1928年に初めて生まれたそうなので※、1924年初版のこの頃にはまだないということになります。
ああ辛い……。
※日本製薬工業協会
熱だけでなく、というかむしろこれだけ熱が出るなら他症状もあって当然なのかもしれませんが、咳と痰がひどくてよく眠れませんでした。
頭痛、全身の痛みがあって、咳のしすぎてぎっくり腰(もどき)も再発しそうになって、下痢も酷かったです。
なので、この苦しみを、この時代に、雪降る季節に抱えて…病の本人も看病する家族もどれだけ辛いかと涙を浮かべずにはいられませんでした。
ああ怖い………肺炎って怖い…。
そりゃ結核は死の病の象徴になりますよ。
今べいえいのシリーズで、イギリスさんが例の発作で苦しんでいますが…あんなの、あの時代に見たらどれだけ怖いかっていうのを思いました。
元々目撃した人のストレスっていうのを考えていたんですけど、より…こちらの想像として真に迫りましたね。
せっかく新刊になるはずだったシリーズのまとめ本を延長したので、ページを増やしたり修正したりしたいですね。まとめ5に対しては描写に対して不満が強いので…。
そもそも宮沢賢治の詩をなぜ読んでいたかというと、「カヲルくんって詩にハマりそうだな…」という思いつきからです。
「詩(うた)はいいね…」って言いそう…。
シンジくんが「僕なんか…!」って腐ってたら、「……………つまずいてもいいじゃないか、人間だもの」って言ってきそうだなと思ったんです笑
相田みつをにハマるカヲルくん面白すぎる……。相田みつをさんはシンプルで背中を押してくれるような…ハッと気付きを得られるような詩が多いので、カヲルくんが好くのに丁度いいと思いました。
でも他はどうだろうな…うーん…宮沢賢治は難しいだろうな…と思い、ちょっと改めて読んでみたのです。
現代で良かったと、現代の技術や知識、環境に感謝することは何度もありますが、肺炎にかかったことはその何度目かになりました。
今週は他にもガンダムの新作が出るなとか、ジョジョのジョナサンがループしたとしたらディオとどう接するのかとか、空想を楽しむことに寛容になってきた現代でどの程度まで夢(と分かった上でそれ)を見ても良いのかとか考えてました。
というか、ああ明後日イベントですね…。
ドキドキ…


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