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米英メモ②

  • 執筆者の写真: 耳ず
    耳ず
  • 2024年1月22日
  • 読了時間: 23分

更新日:2024年1月27日

スペードパロ×トランプパロのファンタジーです。


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スペード国は呪いの地である。

ここに住むものには寿命がない。


スート神話


ーーこの星はクラブ、ダイヤ、ハート、スペードの四龍によって治められていました。四龍はその大陸を司る聖霊で、それぞれが能力を持ち、シンボルを掲げていました。


クラブ:春、夜、知識、棍棒、農民

ダイヤ:夏、昼、お金、貨幣、商人

ハート:秋、昼、愛、聖杯、僧侶

スペード:冬、夜、死、剣、騎士


聖霊たちは土地に住む生き物たちに、命の「限り」を与えました。生き物たちは死を怖がり、できるだけ遠くあろうとし、そして死に近づけば限られた命でできるだけのことをしました。

皆がそうでしたが、中でも一等臆病な生き物がいました。

それが人間です。

人間は聖霊たちにお願いをしました。

「どうか命の限りをなくしてください」

そこで聖霊たちは尋ねました。

「お前たちは死を失いたいという。ならば、そこまでして得たいものはなんだ。何が手に入ると思うのだ」

人間たちは答えました。

「生きる喜びです。死を恐れない心です」

聖霊たちは大笑いすると、人間にこう告げました。

「よかろう。命の限りをなくしてやろう。だがな、私たちには見えているよ。この先に何が起こるのか……」


死を失った人間たちは、喜んでその日を「恒久生誕日」と名づけました。

そして三日三晩踊り明かしたあとで、少しずつ日常へ戻っていきました。

ーーところが、戦争が始まったのです。

人々は限られた食べ物や水、資源を奪い合って争いを始めました。争いは酷いものでした。誰もが生きていることを特別だと思わなくなったので、人を傷つけるのも自ら犠牲になるのも厭わなくなっていました。

誰もがここは地獄だと思いました。

話し合うにはみんなが意固地になっていて、話し合うには恨みが多すぎてどうしたら終わるのか誰にもわかりませんでした。

そんな時、ある青年が「誰か死なせてくれ!」と叫びました。

その時天から聖霊たちが降りてきました。


「これでわかっただろう。お前たちは死を手放すと同時に生の喜びも失ったのだ。そして死を知らないが故に、死を恐れない本当の勇気さえ失ってしまったのだ。」

聖霊たちの言葉に、人間は深く反省しました。

「四龍様、死がいかに大切なものかがわかりました。私たちは死を忘れず生ける命を大切にしていきます。どうか私たちに死を返してください」

聖霊たちは過ちを許し、彼らに命の限りを与えました。また、聖霊たちは人間の心の弱さを理解し、見守ることを約束しました。


曙の喜びをクラブの国に。

暁の輝きをダイヤの国に。

黄昏の温もりをハートの国に。


この時聖霊の加護に誓いを立てた者が、それぞれクラブ、ダイヤ、ハートの土地の国王となりました。


ーーところがです。

聖霊たちと話をしてる間に、ある男がお宝を横取りをしようとしました。それがスペードの国王です。聖霊は、男を死ねない体のままにし、真に生きる喜びを奪いました。

そして呪いをかけました。


スペードの国には、明けることのない孤独を!


ーーこうしてスペードには、太陽の沈まぬ夏と太陽の昇らぬ冬が来るようになりました。龍はスペード王が「真に死を恐れぬ勇気」を持つまで監視することにしました。


これが四大国の始まりの物語だと言われています。


「ーーーですから、このスペードの国では時計が重要なのです。時計はいわばスペード神の導き……。ずっと太陽が昇っていては、ずっと太陽が沈んでいては…どこで起きても同じです。一体自分たちはどこにいるのか…。今は朝なのか、昼なのか、夜なのか…時計が正しく時を示さなければそんなことも分かりません。」

「さっきの話だとスペードは聖霊だったけど、どうしてスペード教だと神様になってるのかな」

「それは、私たちが過ちを再び犯さないように見てくださる方ですから…正しき道を示してくださる方を信仰するのは当然の成り行きです。

ーーーアルフレッド様!どこにいかれるのですか!」

「散歩だよー!」

「毎日スケジュール通りに動いてくださらないと!己を見失いますよ!」

「大丈夫だよ!スペード神サマが見ててくれるからさ!」



城の庭に出る。

「ーーー次は才能開花の授業だもん…。俺には才能がないのに!」



各国の王家は神話の成り行きで、スートの加護により代々能力持ち。また王家の証に、シンボルが体に浮かぶ。才能は遅くても10才には開花するが、アルは今7才。

早ければ3才で開花するのに遅いから周りからの圧も強く、息苦しくて家出癖がつき始めてる。才能はなくても運動神経と地頭の良さで、見つかったことがない。


アルの父…現スペード王は、人の命に限りを与える能力……つまり死ねるようにする力がある。スペード神と同じ力を持っているので支持率が高く、スペード教の儀式に「洗礼」を加えた張本人。

5歳になるとスペード教会から、寿命を与える洗礼が行われる。その寿命は「呪いを受けなければ死ぬはずだった歳」で設定する。

しかし、術を施す王は自分自身にかけられないので、長年1人でおり、正しければ1世紀は国王を務めている。


スペード国は神話での立ち位置がアレなので、他国から腫れ物に触るようにされがちだが、時計産業で発展した際いち早く工業化し、その技術に目をつけたダイヤ国と取引をしてダイヤ王室と兄弟関係を結びマイナスなイメージが緩和された。


アルはある日森に迷い込む。

森は「人知らずの森」と言われていて、この森を開拓しようと何人もの人間が入ったけど、いつも知らずのうちに森の外に出てしまう不思議な現象がある。

それは森に住む魔女の仕業だと噂されているが……。


さて、にも関わらず、アルは森の外に出られないと迷っていた。迷った末にアーサーと出会う。


アーサーは今の時代から半世紀以上前の人で、魔女の噂の張本人。かつてはスペード王室の人間だった。

アーサーの母はスペード国民で、スペード国王の妾となった人。ダイヤ国からきた正妻より早く身籠り、男児を出産したため妬みを買いいじめられ、王もダイヤ国との友好のためいじめを黙認した。

最終的にアーサーの母は王暗殺の疑いをかけられ、後に「人知らずの森」と呼ばれる森に逃げるも捕まり死刑となった。

アーサーも同じく死刑にかけられるところだったが、森に逃げた時に母に庇われ生き延びることができた。

その後「空間操作の能力」が開花していることに気づき、森の妖精たちと一緒に4歳の頃から住んでいる。5歳になったら受けるはずだった洗礼の儀式を受けていないので、死なない体である。

(ちなみに死なないとは不老不死ということであっても、死ねないわけではない。他よりもダメージに耐性があるが、あまりに大きな外傷や致命的な病気になれば死ぬこともある。普通の人より死ににくいというだけ)

スペード王絶対復讐するマン。

(ちなみに正妻はその後ちゃんと男児を産めたよ。※アルの母とは別。半世紀以上前の人なので)


そんなわけで、アルを誘拐しそれを人質にスペード王に復讐をするつもりで、アルを森に誘い入れた。(というかアルが森に入るのを許可した。そして普通迷うから、自分のところに来るよう誘導した※料理の匂いで)

だけども、久しぶりに触れる人の優しさが沁みすぎて「アルフレッド……良い子だ……利用するとか無理……」てなる。

それで家に返すけど、アルが定期的に遊びに来るようになる。

その内にアーサーの体にスペードのシンボルを見つけ、アーサーとスペード王室の関係を疑うようになる。

またアーサーの空間操作の力を看破し、森の謎の現象の原因を突き止める。さらに能力・シンボル持ちなことと、行方不明になった妾の子どもとアーサーの関連性を見抜く。

それらを聞き、アーサーはぽつりぽつりと真実を語るようになる。

そしてアーサーの母にしたことだけでなく、この国づくりのために父がしている悪事を知るようになる。


「洗礼」とは実は選民思想、優生思想による国民の分別会。王が「要らない」と判断した子どもは早くて翌週には死んでしまう。その判断には、その子自身の性格や能力も関係あるが、家を含めた評価がある。

王は王なりに、初代王のような過ちを犯す人間を作らないように使命感を持って命の長さを操作している。

教会も突出した指導者がほしいのと命の操作が怖いためにその活動に一役かっている。


アルは正義感が暴走し、父に直談判しに行く。アルを止めるため、アーサーが後を追うが、王はアーサーが唆したのだと責任逃れをしようとする。また、アルの母もそんな王の言説を支持し誰も罪を認めようとしない。

アルは怒りに目の前が真っ白になり、ハッと気づいた時には足場が粉々になっていた。顔を上げると、城が…街全体が崩壊していた。

そして父や母であったろう肉塊が、使用人、住人であったろう人々の肉塊がペシャンコに…そこかしこにあった。


突風が全てを攫ったかのように、大津波が全てを流してしまったかのように、街中の建物が薙ぎ倒されていた。その中で、「人知らずの森」とアーサー、アルだけが生き残っていた。


アルフレッド、10歳。

正義感の暴走で、「重力を操る能力」の才能が開花した。ショックを受けたアルは茫然自失となり、沢山の命を奪ってしまったことに絶望する。

アーサーは、自分がするはずのこと(王に復讐=殺害)をアルにさせてしまった罪悪感や止められなかった責任感、くれた温もりを仇で返してしまったことなどからアルの記憶を奪う。(アーサーには第二の能力があり、それが精神操作。なぜ2個あるかは謎)

そしてアルの目が再び覚めると、そこは森の中だった。



「誰だい、きみ」

アルは側にしゃがんでいた男に名を尋ねる。

「誰って……お前こそ誰だよ」

随分ぶっきらぼうな返事だ。

考えあぐねていると男はさらに聞いてきた。

「子どもがここに何の用だ。名前は?」

「名前………分からない。

!!分からないんだぞ……!」

「じゃあどこから来たんだ?」

「……分からない」


このやりとりは、アーサーがちゃんと記憶を消せてるか確認するためのもの。

アーサーは「あちこち行くとすれ違うかもしれない。ーー家族の迎えが来るまで家にいれば良い」と言う。


アーサーはアルがまた外に行くのは危ないと思い軟禁状態にする。また、開花した重力操作の力をコントロールできるよう指導する。ただし、それは重力操作ではなく、時間操作の力だと嘘を教える。

アルがGを上げると、空間が歪み時の流れが遅くなる。それを利用してそのように嘘を教えた。

空間にかかる圧力は、アルから奪った記憶を基礎に築いた別空間に転移されるようにしている。

この土地には日の沈まぬ夏と、日の昇らぬ冬があることを説明し、ここでの暮らしで時計は不可欠だと説明する。肌身離さぬよう、前述の術の触媒となる手製の時計をアルにあげる。

アーサーはもしアルの力が外の人間にバレたら罪にかけられ殺されるかもしれないと危惧していた。

軟禁もそれを防ぐためのことだった。

ーー外の世界は知らなくていい。


アルが、俺は本当は捨てられたんじゃないかと不安を話す回がある。

でなきゃ、どうして父さんも母さんも迎えにきてくれないの…。

落ち込むアルにアーサーが語りかける。

「俺も…親がいない。ずっとここに1人で暮らしてるんだ。親はもういない…知ってるんだ俺は…。もうずっとひとりなんだ。だけど…妖精はいたし、人間なんかいなくたってひとつも寂しいと思わなかった。

だけど、アルフレッドと会って、人間の温もりを思い出したよ。ひとりが寂しくなった。

………だから、親がいなくて悲しいってことは愛されてたってことだ。そういうことだと思うんだ。お前を大事に思う人が居たんだよ。だから、探してないなんてことはないと思うぞ」

「アーサーはどれくらい1人でいるの?」

「………誕生日を忘れてしまうくらい」

「……悲しい?」

「悲しくない。言ったろ、もう何も思わないくらい一人に慣れてるって」

「…俺は、アーサーが大好きだぞ」

驚くアーサー。

「さっき、俺と会って寂しい心を思い出したって言った!俺はアーサーが好きだから、それが分かるからきっと悲しいんだ。

約束するよ!」

アルは自分の小指にアーサーの小指を絡めて、言った。

「俺はずっと一緒にいるよ。アーサーが大事だから、大好きだから。ずっとずっとそばにいるよ。例え離れ離れになったとしても、俺は必ずきみを探すから!君を迎えに行くからね」

アーサーは泣きそうな笑顔でぽつりと言葉を溢した。

「ああほんとうに……………ばかだなお前は…」



しかしアルは大きくなるにつれて森から出られないことを嫌に思い、アーサーの言いつけを破って外に出るようになる。


スペード国の冬は太陽が昇らない。けれども真っ暗というわけではなく、薄紫色の空に覆われるだけだ。アルはアーサーにいつものように森の中を散歩してくると言って、こっそり森の外に出た。するとそこには一面真っ白な雪が降り積もっていた。

「うわ〜!すっごいなあ!

森の中も寒いけど、ここまで雪は降り積もらないよ」


アルがはしゃいで雪原に駆けていくと、何かに足を引っ掻け転んでしまう。ぶつけた場所をさすりながらぼやく。

「結構ゴツゴツした地形なんだな…」

しかしあたりを注意深く見ると、雪に覆われているものが、なんらかの遺跡であることが分かった。アルは感動してそこら中を探索する。そして、雪が溶けたらもっと詳しいことが分かるだろうなと胸を躍らせて森に帰った。

もちろん森の外に出たことはアーサーにばれている。帰ってきて早々ガミガミ怒られるがアルはそれどころじゃない。

「聞いてよ!でもさすごいんだぞ!雪の下に遺跡を発見したんだ!」

アーサーはそれを聞いて固まってしまう。そして、その発見を冷たく突き放し、アルにもう外に行くなと注意する。

アルはむくれて、約束を守らなかった。


そうして、冬が終わる頃。

いつものように外の探索をしているとアルは人間の集団と会う。

その人たちはダイヤ王室や他国にいて生き残っていたスペード王室の人間だった。彼らは、あなたを探していたとアルを連れ帰ろうとする。

アルは何がなんだか分からず、説明を求めると次のようなことを言われる。


「貴方様はスペード王室の人間で、亡き王の御子なのです。6年前…前代未聞の大災害がスペード国を襲いました。それは地震でも台風でも、大洪水、大噴火でもありませんでした。……一夜にして、忽然と街が消えたのです。大きな隕石が落ちたかのような痛ましい跡を残して、スペードの人々が…街が…スペード国が失われたのです…。

私はあの時、ダイヤ国のスペード国大使館で勤務しておりました。突然強い風が吹き、向かいの建物の看板が室内に飛び込んできたかと思うと、地響きが轟々と鳴ったのです。恐ろしかった…。

しかし、…そんなことよりもっと恐ろしいことがスペード国に起こっていたのです。

はじめは巨大隕石が落ちたのではないかと言われました。しかし、いくら調査してもかつての王都には隕石の欠片はなく……見つかるのは悲しい事実だけでした。」

「……何が原因かは、今もわからないのかい?」

「いえ…!我々は被害区域と同じ半径にある「人知らずの森」が何の被害も受けていないことに目をつけました!この森には昔から魔女が住むと言われているのです。

…アルフレッド様、ここから出てきましたよね?もしかして、魔女を知っているのではないですか?」

アルは驚いて、まさか…と固唾を飲む。

「待ってくれよ!俺は……アルフレッドだけど、君たちが探してるアルフレッドとは限らないよ!だって、その災害の時にスペードにいた人は皆…!」

「いいえ!貴方様の右手の甲にあるスペードのシンボル、それがアルフレッド様である証です!さらに言えば、現在ダイヤ国にてスペードの難民対策をしてくださっているマシュー様と瓜二つのそのお顔……それがなによりも血の証!マシュー様は王の最初のお妃様…第一王妃ダイアナ様の御子なのですが、アルフレッド様は王妃が亡くなられた後の、第二王妃…エリザベス様の御子なのです」

「でも、俺が森で一緒に過ごした彼にも同じシンボルが…」


そういうと、彼らは顔を見合わせて頷いた。

「やはり貴方様がご一緒にいるのは魔女で間違いありません。それは…かつてスペード国を陥れようとした女の子ども…アーサー・カークランドに間違いないのです!」


そうしてアルは、アーサーがスペード国を逆恨みして今回のことを引き起こしたのだと告げられた。アーサーはスペード王に恨みを持っており、復讐のため貴方の記憶を奪い取り、優しいフリをして利用しようとしているのだと教えられる。彼はスペード国にさらなる災いを持ち込む気なのだと言われ、アルは驚く。全てを信じられないものの自分を探しにきてくれた人たちを無碍にできない。定期的に報告することを約束し、すぐには帰れないことを了承してもらう。そしてアルの中でアーサーへの疑念が膨らんでいく。

アルは定期報告会を通して、スペード国の現状、外の人たちの生活を知り、スペード国再建のために尽力したいと思うようになる。

一方アーサーに対しては不信感を募らせていく。昔のことや外の世界のことを聞いても、何も教えてくれず束縛だけしようとする姿勢に信用がなくなっていく。


ーーーそうして半年後、アルはアーサーに反旗を翻す。森はアーサーの結界がはられているため、アル以外は侵入できない。だから一対一で対決することになる。

アーサーは、アルの、「信じたかったけど、今も君との日々が嘘だと思いたくないけど………君からは誠実さを感じられない!本当のことを教えてくれよ!アーサー!」という言葉に、もう潮時だ…と思う。少なくともアルは殺されることがなさそうだから、時計さえ持っててくれれば守ってやれる…と思い、攻撃するフリをして自分と過ごした日々の記憶を奪う。


「俺は、ここから出ていく」

首元に剣先を向けるアルにアーサーは笑う。

「だからお前は詰めが甘いんだ」

空間操作でしれず距離を詰めるとアルの頭に手をかざす。殺されると思い息を呑むアルの様子に、アーサーは傷ついた笑顔で言う。

「できるわけねえだろ…ばか…」


ーーそうしてアルは、生き残ったスペード国民と共にスペード国再建のための生活を始める。



それから4年…。

スペードの土地には人々が戻り、かつてほどではないものの国には活気が満ちていた。

(アルはスペード王として、国民のもとに帰った時スペード国が亡くなっていないことを宣言した。人も物も壊滅状態となり、無政府状態となっていたため亡国扱いされていたのでそれの撤回を要求。そしてダイヤ国がそれを承認し、正式にスペード国は復活した。

アルはマシューと連携して国民の保護を要請し、国家再建のため各国から多額の借金をした。※第一王妃の息子、マシューが王にならなかったのは①本人が表に出るのを断った②国家再建より、各国に残った国民の保護がしたかった③率いるだけのカリスマ性がなかった、が理由。アルが戻ってきて、慎重さよりも大胆さで人を惹きつけ、多額の借金をしてでも国家再建をするという思い切った判断によって、残った国民たちも国に帰るため奮闘した)


国も落ち着いてきた頃、再建されたスペード城に侵入者が入り込む。

気づいたのは、廊下を歩くアルフレッドの前に男が現れた時だった。男は一気に距離を詰めると、アルの首にナイフを当て、間一髪のところで取り押さえられた。アルが時間を止めたのである。

男の着ていたローブのフードがおりると、見覚えのある顔だった。そう、それは間違いなく大罪人のアーサーであった。アーサーはただちに牢屋に入れられ、臣下によって死刑の用意がされていった。しかし、アルにはどうしても気になることがあり、執行猶予を与えることにした。気になることとは「どうして今頃になって現れたのか?」ということだった。

アルの記憶は森で目が覚めたところから、スペード王室の人々と再会するまで飛んでいる。人々の言うとおりなら、それは魔女に記憶を奪われたせいらしいが、それなら、一緒に過ごしていた筈の5年間には何があったのだろうか。何故その時に自分を殺さなかったのか。いや、思い出せないだけで何かかけられているのかもしれないが……。ーー人々は魔女がスペード王室に恨みを持っており、この国にさらなる災いをもたらすと言っているが、ならばなぜ被災直後の壊滅状態を狙ってこなかったのだろうか?

君は俺を知ってるんじゃないの?何が狙いなの?ずっと森から出てこなくて、手も足も出せなかったのにこんなに無防備に出てくるなんて……少なくとも俺を殺すことが目的じゃないのは確かだ。


アルはアーサーと話をするが、口を割らない。毎日毎日訪問し、俺の問いに答えるまでは死刑を執行しないと言う。するとアーサーは王暗殺未遂の人間を放っておくなんてバカかと呆れ、思案したのちにこう告げる。


「……お前だけなら人知らずの森に入れる。そこに行ったら何か分かるかもな」


アルは人知らずの森に向かうことにする。


森に入ると不思議なほど足が進んで、どこに向かえば良いのか体が覚えているようだった。

「こんなに広い森なのに、道がわかるなんて…俺が5年間ここでアーサーと過ごしていたのは本当の話なんだな…」

しばらく歩くと整地された広場のような場所に出る。

「おかしい…ここに、ここにあるはずなんだ!何かわからないけど、「足りない」んだ…!ここの風景には何かがない…」

(ちなみにないのは一緒に暮らしていた家)

アルが歩き回ると、近くの茂みに不自然に草の生えた場所を見つける。

「そうだ、ここに、何かある気がする…分かる。ここに何かある…!」

掘り返すと大きな四角い箱が出てきて、中を見ると沢山の手紙が入っている。手紙を読む。手紙は両親宛に書かれていて、帰る時はアーサーも一緒が良いと書いてある。


「アーサーは時計をくれた。ここは一日中明るいか一日中暗いかの二つしかないから、俺がいつ、どこにいるか迷わないようにくれたんだ。この時計はお守りなんだよ」

「アーサーは俺に時間をあやつる力があることを教えてくれた。暴走すると大変なことになるから、コントロールできるように、毎日稽古してくれるんだ」

「アーサーは俺と一緒にご飯を食べてくれる。本当は食べてるところを見られるがきらいなんだ。だけど、俺がさびしいからって言ったら、俺が探検で遅くなっても食べるのを待っててくれる。それに、作るのは得意じゃないみたい。だけど頑張ってくれてるんだ」

………


だからアーサーも一緒が良い、と。

そして最後に、こう綴られる。


「俺はアーサーとずっと一緒にいるって約束した。離れ離れになっても探すって約束したんだ。だから、もしここまで読んで、それでもダメって言うなら俺が彼を迎えに行くことを許して。

アーサーは自分の誕生日も忘れちゃうくらいずっと一人でいるんだ。だから俺は、彼の誕生日を作った。そしてアーサー、生まれてきてくれてありがとうって祝ったんだよ。俺はずっとそれをしていたいんだ。だから今は一緒じゃなくても、いつかは一緒にいても良いでしょ?」



手紙を読んで、アルは時計をくれたのが亡き父ではなくアーサーであり、自分の力を開花させた(誤解だけど)のがアーサーであることを知る。アルは城に帰り、アーサーに森に行ったことを告げる。アーサーは自分の痕跡を全て消したので、何の成果もなかったんだろうなと思っていたら、まさかのタイムカプセルの話が出る。アーサーはそれの存在を知らなかったので驚く。そして、アルは昔の自分が書いた手紙を読み上げる。読み上げるのは、もし利用するために懐柔したなら心理的動揺はしないと思ったから。そしてアーサーはめちゃくちゃ動揺する。それを見てアルはアーサーの目的が自分を殺すことではない=スペード国への復讐ではないと確信する。もしその気なら、あの災害を起こした後更に追撃する筈だし、アーサーのバックにスペード国を陥れたい他組織がいてもおかしくない。ところが災害後は自分を攫った以外何もなかったし、今回の犯行も単独だった。たとえ何らかの理由があって災害後何もできなかったとしても、利用する気で攫った自分に何の細工もしないで帰すなんてことがあるだろうか?一応アルには記憶障害があるので、それを細工と言ってもいいが…。

色んな可能性を考えるけど、アルにはどうしても家臣が言うような狙いをアーサーから感じられない。そして、なんとなく彼は「死刑になる」ことが目的だと思う。

アルはアーサーを死刑にしたくない。そのためには、アーサーの罪で最も大きい「10年前の大災害」の真相を明かす必要があると思う。その鍵は、多分アーサーと一緒に過ごした自分の記憶の中にあると考える。アルは自分の記憶を取り戻すため、当時何があったのかを知るためダイヤ、ハート、クラブの国を訪れ、奪われた記憶を取り戻す方法を探す。また、あの時スペードに何が起きたかは土地の精霊ーー四龍ーーが見守っている筈だから、伝説の地に行けば真相が分かるかもしれない…と助言をもらう。そして、四龍から何故それを知りたいか、それで何を得られると思うのか聞かれ、「罪のない人が罪にかけられ殺されそうになっている。10年前の大災害がなぜ起きたのか知りたい。」「そしてそれを解き明かすことは、今後のスペード国の繁栄に繋がると思っている」と答える。四龍は、「スペード国の繁栄のためにそれをするのか?それとも罪のない者を助けるためか?」と聞く。アルは…後者で答える。「その場合、お前の選択によってはスペード国は再び孤独な時代を迎えるだろう。それでも罪なき者を助けたい……それで宜しいか」

アルは自分の選択次第なら、と思い頷く。四龍はそれを了承しアルに力を貸す。

(ここで前者を選ぶと、力を貸さずともスペード国は繁栄するからこのまま帰れと言われる。また欠けた記憶は繁栄の支えとなるから、取り戻す必要はないと言われる。この場合アーサは死に、真相を知ることはできない。)


「大災害が何故起きたかは、お前の行先で自然に分かる。その時お前がどのように選択するのか見守っていよう…」



スペード国に帰ると、アーサー死刑の段取りが進んでおり、慌てて処刑台に近づく。(国王がアーサーと話を始めてからあちらこちらへとフラフラ。何かとアーサーの肩を持とうとするので拐かされていると思い、アルを取り戻すため執行することにした)

台に登った瞬間、ギロチンの刃が落ち、体に触れたところでアーサーの首が落ちる。この瞬間アーサーの術が発動し、アーサーは体(死体)を残して「アルの記憶を土台にした空間」に精神転移する。アルもアーサーの体に触れていたので、一緒に精神世界へいく(アルの体は昏睡)。


「アルの記憶を土台にした空間」とは、アルの「重力の力」を「時間の力」と誤魔化すために設けた空間のこと。

例えば、アルが時間を遅くさせると強い重力がかかり、遅くさせればさせるほど人や物の耐えられる重さではなくなっていく。その重さを別空間で代替させることで「時間が遅れる」という結果だけを残すことができる。また、全くの別空間では相互補助ができないため、アルフレッドの記憶が土台となってリンクしている。

アーサーはこの世界(精神世界と呼ぶ)の管理・維持を担っているが、負荷が大きくなりすぎて別空間に居ては難しくなってきた。アルがスペード復興のために他国と時間の流れをずらしたので、そこから膨大になっていた。アーサーは世界を崩壊させないために、自身精神世界に住む必要があると思い、死にに再建されたスペード城へ来たのだった。


アルが目が覚めると、そこは見た事のない場所だった。(アリスの世界観)このアルはアリスポジション。

→ハートの女王に会うまでにどんどん記憶を回収していく(この過程が、離れ離れになっても迎えにいくの伏線)

途中でアルと同じ姿の三月うさぎに会うが、これは奪い取った記憶がアルのものなので…その擬人化みたいなもの。

→ハートの女王のアーサーから真実を教えてもらい、アルは自分が残るから生きてと願う。アーサーは抵抗する。帰る体がないのにどうしろと?

→精霊たちが出てきて、どちらか片方なら助けても良いと言われる。そこでアーサーとアルが「どちらが死ぬか」で言い合いになる。

アーサーは生き返ったところで、側でアルが生きてないなら希望がないと主張(気持ち的にも立場的にも)。だけど、アルは今まで自分の背負う筈だったものを背負ってくれたアーサーに生きててほしい。それに、アルだってやってしまったことが大きいから、帰ったところで王の資格がないと言う。死んでここで国を支えると。アーサーはそれこそ馬鹿だ!と言い、バカ正直も美徳とでも言いたいのかと詰め寄る。スペードにはお前が必要だ。お前がやったことは明かす必要がない!悪いと思うならその人生をスペードに捧げろ!欺き続けろ!と言う。アルはそれだと父のやったことと同じだ!と言って埒があかない。

→そこで改めて聖霊がどちらが死ぬかと聞くと、アルがアーサーを遮って俺が死ぬ!と言う。スペードの精霊はその言葉を待っていた(スート神話の「真に死ぬ勇気を持った時…」というところ)と言い、二人とも助けてやると言う。また、アーサーの言ったこと(「お前がやったことは明かす必要がない!悪いと思うならその人生をスペードに捧げろ!欺き続けろ!」というもの)と同じことを言い、この世界の圧力を引き受ける代わりに伝説の地で宣言した約束を守るよう言う(罪のない者を助けるため=アーサーを大事にしなさいということ)。

→現実に帰り、二人とも生き帰り、アーサーはスペード神をつれて現れる。アーサーはスペード神よりスペード国が過ちを犯さないよう遣わされた審判者だと説明し、魔女の罪は存在しないと主張。人々は初めて見るスペード神にひれ伏す。アルは先王が成した悪行(洗礼)を話し、選民思想はあってはならないと説く。アルはアーサーをクイーンとし、再び王が誤った道を歩まぬよう任命すると宣言し、今後も国の繁栄のため尽力することを誓う。

そしてスペードの国は王が主に外交を担い(一部王政を残す)、国民が内政を行う民主制を取り入れる。こうしてスペード国は再び繁栄の道を歩み始めたのだった。


 
 
 

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