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シンエヴァ感想③おわり

  • 執筆者の写真: 耳ず
    耳ず
  • 2021年3月23日
  • 読了時間: 4分

この記事はシンエヴァのネタバレになりますので、まだ見てない/ネタバレが嫌だという人は読まないでください。

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私がエヴァをまともに見たのは2016年のことでした。

よく覚えています。なぜなら一話を見た時、2015年の文字を見て「去年じゃねーか!!」と突っ込んだからです笑

その以前からエヴァのキャラクターは知っていましたし、テレビで偶然見たりはしていましたが、一から全部ちゃんと話を見たことはなかったのです。そのきっかけがエヴァ新幹線とは不思議なものですが、どこで縁が繋がるか分からないものですね。


そうしてエヴァを見て驚いたのは、傷ついた心の描写の正確性でした。それは鋭いくらいで、こうした精神をどのように演出するかという点でもとても優れていると思いました。だから、私がエヴァのテレビ版で気に入っているのは16話や25、26話などです。同じ理由で旧劇場版も好きでした。セル画、声優さんの演技、あの演出。どれをとってももう再現できません。(特に私はセル画厨なので、新劇に興味がなかったのはそういう理由もあります。)

中でもこれをなしに成り立たないのは庵野監督です。あの時代の、庵野監督の精神状況です。当時のことを語ったエッセイ「スキゾ・エヴァンゲリオン」で、庵野監督はキャラクター全員が自分の心を割いた人物、みんなが自分の分身だというんです。人の心が傷ついているとき、自分をどう見るか、周りをどう見るか、何を考え何を得ているか…それがわかるのは只中にいる人だけです。かつての自分ではいけません。その心は昔のもので、当時ほどの痛切な苦しみを今の自分は少しも分かってやれないからです。あの時を当時客観的に把握できる心があれば、その余裕があれば鬱になっていません。今の自分がどれだけ心の苦しみがわかるといったって、それは知っているだけで、もう心で感じていません。もう当事者ではないのです。それは、あの頃見えていたものが見えないということです。当時の庵野さんには、苦しむシンジ君の心が描けました。それは視聴者が、理屈ではなく心で感じれるほどに…。痛々しく、悲しく、狂気的に。庵野さんが自分の心を割いて作品を作っていることは、シン・エヴァンゲリオンを通してよくわかりました。

1で書いた不満がそれを裏付けていました。エヴァのもつ心理学要素は、フロイトやユングといった精神分析学に基づいており精神医学とは違います。だから、庵野監督は人の心の傷を研究や統計を通して知っているのではなく、自分の経験から知っている。それは逆に、心の治癒に何がいるのか知らないということです。監督は鬱/躁鬱といった経験をしていますが、経験者は自分がどうやって立ち直ったのかよくわかっていません。この人がきっかけになったとか、これがあったからだとか思い付きはすると思いますが、それは治癒過程を把握しているのとは違います。体に負う傷と同じで、痛いときは傷口をよく見ますが治ってきてからは気にしない。気づけば治っていた。どうやって治ったか?それを探り、治療の道筋を確立するのは医者です。パンフレットで、シンジ君の声優・緒方さんに「どうやったらシンジが立ち直るか」を尋ねたという一面もありました。庵野さんは分からないのだと思います。それは治療法もですし、無言症に陥るほどの深い心の傷もです。今の庵野監督には描けない。テレビや旧劇時代ほど追い詰められていないから。

監督は、自分の心を割いて作品を作っているから。

彼の作品は(もちろん映像演出論や物語のロジックはあると思いますが)、理屈じゃないからです。感性が光っている。だから、今の庵野監督はそこまで描けないし、逆にだからあのシーンを作ることができたと思うのです。良かった………!

そういった点で、私は皆が大人になって、エヴァのない世界に自分たちを見つけることができて…監督がそういう作品を作れたという事実に心底安心しました。心から良かったと思いました。だからシンエヴァが大好きです。最高です。

私の不満点は、そのままでいいです。自分で昇華すればいいので。テレビ、旧劇では苦しいほど傷ついた心を正確に描いていたのに、どうしてこの立ち直りはそうしてくれなかったのか…と一度目は不満たらたらで仕方ありませんでしたが、それはそういうことだったのです。これでいいんです。


シン・エヴァンゲリオン𝄇


エヴァという作品の終わりとしてもすごく良かったですし、庵野監督がこうしたものを作れたという点でもすごく良かったです。

私の好きなエヴァは無かったけど、私の好きなエヴァで終わらなくて良かったです。

本当に良かった……


庵野監督やエヴァに関わった製作者すべてに感謝します。私は昔からのファンでもないし、偉そうに言うほど熱心なファンでもありませんが、2016年のその時からエヴァが大好きです。

ありがとう、ありがとう…

お疲れ様です、


おめでとう……!

 
 
 

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